婦人像(船越 保武 作) 制作 昭和61年
作者船越保武は、カトリックの洗礼を受け、宗教的な作品が多い人ですが、大理石彫刻家としても知られています。この婦人像の肌理(きめ)の詰め(なめらかさ)は、大理石彫刻をこなした人でないと出せないものなのです。
高村光太郎は、彫刻は「視覚で経験する触覚だ」と言っています。ところが、それはモデリング(肌の肉付けをする時)のタッチの荒さがある作品だといいのですが、この作品のように、どこまでも柔らかく、なめらかですと、じかに触ってみる方が、作品の「品」がよくわかります。人間は、その重さに耐えぬほどの着衣(社会的存在としてのポーズも含めて、いろいろと外面を装い、着込んで)身を包んでいますが、そのすべてを取り去っても、その人の何かたるを知ることはできません。
その内奥にあるあるものをさぐりあてようとするのが、彫刻家だとも言えます。
このモデルの何をさぐり出そうとしたのかは、見る人によって変わってくるのでしょう。人間はみんな違ったモノを着込んでいるのですから。清楚な無言の愛を想う人もあるでしょうし、田園の幸福に忘我の時を感ずる人もあるでしょう。
安らぎの心の一時かもしれません。皆さんの手(触覚)で感じ取ってみて下さい。
「作品の解説」(解説文は、市民文化センター元館長 今純一郎氏)
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