道標・鳩 (柳原 義達 作) 制作 昭和54年
「鳩」の作者柳原義達は、実は鳩よりも烏(からす)の作品で有名です。風に向かって荒浪をにらむ烏、飼をうばいあい、毛羽を逆立てる烏、動物本能をムキ出しに闘う姿態の烏など、ぞっとする荒々しさや力強さ、貪欲さを見事に表現した彫刻で知られています。
ちょうど、湖畔の乙女像の作者高村光太郎の父・高村光雲の野猿をもう一歩荒っぽく表現したような作風で、一枚一枚の羽根を荒積みし、静より動、動より激・闘・怒・暴といったイメージがつよまる技法で構築しました。しかし、なにせ烏(からす)ですから、どうも部屋に飾って鑑賞するには、闘争本能をかきたてる職人の人ならともかく、一般的にはなじまない感じがします。鳩と烏では、大分、イメージが違いますが、この「鳩」は、そうした作者の作風がよく出ている作品です。構築性の強い具象作品で、童謡のハトポッポの可愛さとは縁遠い作品ですが、格調の高い、ガッシリした小品で、文化センター事務室入り口の番人のように構えて、十和田市の文化活動の発展を見つめています。
「作品の解説」(市民文化センター元館長 今純一郎氏) |