慈しみ(鈴木 徹 作) 制作 平成2年
柳田国男は、遠野に住んでいた佐々木喜善から、喜善の祖母の姉・おひでが夜なべに語った話を聞き取り、「遠野物語」を書きました。江戸から明治にかけての山村生活や昔話・伝説・世間話を書いたもので、その中に馬と娘の恋物語が出てきます。娘が馬を愛し、ついに夫婦になります。それを知った父親は、馬を桑の木につるして殺します。娘は死んだ馬の首にすがって嘆き悲しみますが、父親は激怒して馬の首を斧で切り落とします。すると、馬の首と娘はその姿のまま天上へと飛び去ります。
桑の枝で作った神像に布を着せるオシラ様信仰は、こうして始まったということです。この話に感動したのが、「慈しみ」の作者・鈴木徹です。馬と娘の純愛を清潔に形象化しようと、馬と娘シリーズが生まれます。その作品も本市にあれば楽しいでしょうね。
ところで、明治十七年、日本最初の洋式競馬で優勝した南部馬の盛号の骨格標本が、盛岡農高に現存します。
これが実は三本木生まれの馬で、「慈しみ」はこれも参考に体高も低くし、子供を乗せて「ハイシ、ハイシ、走れよ仔馬」と楽しんで・・というのが、作者の願いなのです。
「作品の解説」
(解説文は、市民文化センター元館長 今純一郎氏)
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